黒沢明「七人の侍」

名作を見ようキャンペーン第二弾。
これも名前はかなり有名だが古すぎて見る気は今まで起きなかった。 ただ、見終わった今なら言える。みんな見よう。面白いよ。
あと、全部で3時間ほどもあったのか。前編後編でディスクが分かれてる映画なんて初めてみたけど、そんなに長く感じなかった。 それだけ集中して見れていたということだろう。特に後編は最後以外はほとんど目を離す隙がないんじゃないかってくらい濃厚だった。

あらすじ

時代はおそらく戦国時代中期。 野武士に襲われて苦しんでいる村があった。 村民は野武士に従い人質や食料を差し出していたが、状況を変えるために侍を雇い守ってもらうことにする。
その後、勘兵衛をはじめとする七人の侍が村に来ることになり、野武士と戦うための準備が始まった。

感想

面白かった。白黒の映画なんて初めて見たけど、そんなもの関係ないくらい面白かった。 これを見ると凄いCGによるエフェクトなどのリッチな表現なんてなくても面白い映画は作れるんだなと思える。 壮大なスケールとかいうまやかし言葉ももう耳に入ってこないね。 なんたって七人の侍はほとんど村のなかだけの話だ。 マトリックスの最後とか演出過多でわけが分からなくなっていたような覚えがある。

ただ言葉が非常に聞き取りずらい。 何と言っているかわからず、聞き直したことも一度や二度ではない。 それとやはり古い作品なのでところどころ何が起こっているか見えなかったりする部分もあった。 それでも安っぽさは全く感じられず、ほんとに60年も前の作品かと驚かされた。 時代劇だったから良かったのかも。

前半は仲間集めで後半が村での野武士との戦いになる。 仲間も個性的な人がそろってきたなという顔ぶれ。 一番意外だったのはメンバーの中で最も頼りにならなさそうな菊千代が結果的に必要不可欠な人間であったと言えるところ。 そもそも、村にも勝手に付いてきただけだし。 逆に勝四郎があまり見せ場もなく終わったのも意外だった。

当初はかっこいいヒーローものとかかっこよく戦って散っていった七人の漢達がいたそういう話かと思っていたけど、 野武士相手に七人の浪人が村民と協力しながらあの手この手で野武士に立ち向かう結構泥臭いお話だった。
七人も最強というわけではなく、せいぜい腕の立つ人は2、3人ほどであとはムードメーカーや子供、阿呆などとそんな感じだった。 だからこそか、だんだんと七人に感情移入していってそれぞれを好きになっていった。 後半は誰も死ぬなよと思いながら見てた。

平八が旗を作ったところがすごく好きだったなあ。粋なことするよなと思った。ああいうの好きだ。
あの旗を見てもやっぱり菊千代は他の侍たちとは違う少し特殊な存在だったんだなと思う。

個人的には久蔵が一番好きだった。 久蔵のファンは結構いると勝手に思っているんだけど。 ときがときならそういうものもあっただろう。 かっこいいよ久蔵。おそらく剣の腕は一番強いし、寡黙だけど優しい面もあるし、徐々にしゃべるようになっていく久蔵をニヤニヤしながら見てた。

やっぱり戦いの部分は壮絶で圧巻であったが、戦いの前の日常での七人の侍達の関係が良いよね。 それと村民との関係もね。菊千代のようなコメディ要因がいたから面白かったのかも。

最後の雨の中の戦いは有名でテレビで何度か見かけたことはあったけど、通してみるとなお凄い。 壮絶としか言いようがないが、本当にすごい戦いだったという感想しか出てこない。 別にドンパチ爆発したりしているわけではないけど、別にそういうのなくてもいいなと思わせる雰囲気を出してた。

最後はあんな風になるとは思わなかったな。 勘兵衛の最後のセリフの「今度もまた、また負け戦だったな・・・・・いや、勝ったのはあの百姓たちだ・・・儂たちではない・・・・」がすべてを語っている。 対照的な村人たちと勘兵衛たちの比較が印象的だった。

村の中だけの話だったけど本当に大変だったなあと思わせる作品だった。 生半可な壮大な冒険じゃ七人の侍には到底及ばないんだろうな。ドラゴンを倒しにいったり、指輪を遠くまで捨てに行かなくてもいいんだよ。 それでも十分おもしろいよ。

今思いついたけど、オーシャンズ11とか好きだったら気に入るかも。

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